数日前、いかにもワイシャツをズボンから出して、少し太り気味で角刈りの高校生が横断歩道の向こう側に、立っていました。私は車に乗っていましたが、「ふー、今どきの高校生だな」と思っていました。そこへ流行の背広を着こなしている紳士風のご老人が背筋をしっかりと伸ばしてやって来ました。二人は同じ方向に向かおうとしていましたが、その時、歩行者用信号は赤でした。すると、紳士風のご老人が何食わぬ顔で、赤の信号を無視して渡って行ってしまったのでした。予想外の展開に、私は目を丸くして、ただただ、ご老人の後ろ姿を車のバックミラーで追っていました。
 その時、ふと気になったのが、一緒に立っていた高校生でした。一人取り残されてしまったのに、しっかりと信号が青になってから、平然と渡っていきました。一瞬の出来事ではありましたが、このズボンからワイシャツを出してポケットに手を突っ込んでいる姿と背広に身を包んで、さも上品に歩く姿は、私に「貧困なる先入観の罪」を教えてくれました。勇気ある高校生に感謝と共に、あの急いでいたおじいさんには、是非今度また赤の信号で渡ったときには、渡り終わってからでもいいので、「後ろを振り向いて、赤信号で待っている高校生を見てね」と言ってあげたいと思います。

宮城県議会議員 中島源陽(もとはる)